久しぶりの更新になってしまいました。体調を崩したり、忙しかったり。アバルト595に乗っていないわけでは無いんですが、なかなか記事の更新をしていませんでした。

さて、今回はアバルト595コンペティツィオーネのエンジンオイルについて少し考えてみたいと思います。

1.エンジンオイル基本のき

アバルトのエンジンオイルについて語る前に、皆さんアバルトの取扱説明書はご覧になったことありますでしょうか?そこに、指定油脂類としてエンジンオイルについて以下のように記載がされています。(コンペティツィオーネになります。)

指定規格相当品
SAE 10W-50 マルチグレード化学合成油

指定銘柄
SELENIA ABARTH 10W-50
なお、この銘柄については以前の記事で性状をすこし紹介させていただいたことがありました。

そして、そこにはこんな一文も。
・現在使用中のエンジンオイルに異なるブランドや規格のオイルを補充しないで下さい。
・指定規格(SELENIA ABARTH 10W-50)以外のエンジンオイルを使うと、エンジンを損傷するだけでなく、保証の適用外となります。

とのこと。おかしな文章が書いてあります。指定規格はSAE10W-50化学合成油以外のエンジンオイルと書いているのに、どうして括弧書きで指定銘柄を書くのでしょうね。

かなりの矛盾が感じられますが、指定規格以上の性能であれば保証の対象ということに私は読んでいます。
では、指定規格以上ってなに?ということです。それを知るためには、SAE 10W-50 マルチグレード化学合成油という単語を理解していく必要があります。

2.エンジンオイルの表記の意味
(1)SAE
ではまずSAEから。
SAE・・・「Society of Automotive Engineers」、日本語で言うと「米国自動車技術者協会」という指定機関の規格ですよ。という意味です。

(2)10W-50の意味
つづいて、10W-50ですが、これは三段階に分けて説明をします。

まず、○○W-○○というのは、マルチグレードといいます。適用の季節が一年中のオイルのことがマルチグレード。季節によって使い分けが必要なものが、シングルグレードといいます。

次に、この10Wとか、50という数字が固さを表します。WはWinterの頭文字。つまり寒い時期、の事を表します。

最後に、この10Wと50という数字の意味を説明します。
「W」は「冬の時期」と表しましたが、ではなぜ10という数字があるのでしょうか。それは、始動時の外気温に適した数字となっているのです。

これは、BPのホームページ上で説明されているものになります。


10Wは、-20℃までは、潤滑能力があるオイルです。という意味です。まずこれを満たす事。
潤滑能力ということは、どれだけ固形化に近くならないか。また逆にさらさらしすぎないか。ということも意味します。20Wまでいくと、かなり固めの水飴のようなオイルですから、逆に燃費が悪くなることも想像がつくでしょう。逆に0Wになると、つつーっとしたさらさら粘ったオイルになります。
さて、その一方でこの表現。裏を返すと・・・
「アバルトの指定オイルは、-20℃以下ではエンジン損傷の恐れがあるということを意味します。」
さて、この寒い時期のエンジンオイルは始動時の外気温で潤滑可能かを示すものですから、10W-50というエンジンオイルが指定されていた場合は、0W-50でも、5W-50でも大丈夫という意味になります。
そして、50という数字の意味ですが、実はこれは厳密にいうとエンジンオイルが100℃の時にどのくらい粘っこいか。を表すものなのです。(かなり端折った説明ですが・・・)それを動粘度といいます。
前述しましたが、Wの数字を大きくすると固くなっていきますので、オイルが抵抗となり燃費の悪化なども招くことを忘れてはなりません。

100℃の時の動粘度です。左側のwの前の数字は何が入っても右の数字となります。(単位は、センチストークスと読みます。)
xW-20・・・・・5.6<9.3cSt

xW-30・・・・・9.3<12.5cSt

xW-40・・・・・12.5<16.3cSt

xW-50・・・・・16.3<21.9cSt

xW-60・・・・・21.9<26.1cSt

アバルト595は「xW-50・・・・・16.3<21.9cSt」を満たしていればいいのです。
つまり、100℃の時の動粘度が16.3cSt以上21.9cSt以下のものであれば良い。ということになります。


では粘度についてまとめましょう。

アバルト595コンペティツィオーネの指定粘度は、
1,Wの数字は、0、5、10のいずれか。氷点下にいかない場所であれば15でも良いが、数字を大きくすると燃費の悪化を招くことも念頭に置く。
2,後ろの数字は50以上を狙う。もしもそのオイルの動粘度がわかれば16.3cSt<21.9cStを守る。

(3)化学合成油とは
最後に、化学合成油です。これの意味を正確にいうと、「ベースオイルが化学合成油であること」を意味します。
ベースオイルは数段階にグレード分けがされています。グレード1~グレード5まで現在は存在しています。詳細はこちらをご覧下さい。

さて、SELENIA ABARTH 10W-50でわかっていることは、粘度は指定粘度の範囲内だが、どこまでの化学合成油かがわからないということです。グループⅢのオイルがほとんどでグループⅣやⅤが少しだけ入っているのか、はたまたグループⅤが100%なのか。しかし、それを知る術は無いのです。なぜか。単純明快。企業秘密だからなんですね。これがオイル業界の標準なのです。

(4)つまり何をいれればいいのか
基本的には、純正オイルでいいでしょう。しかし、オイルによって車のフィーリングが変わることも事実。逆に、-20℃以下を記録する場所で過ごしている方は、ディーラー純正オイルではダメなわけです。
ということは、SAEマルチグレードで、○○化学合成油という表記があり、右の数字が50を満たしていて、オイル交換の際になるべく多くのオイルを抜いて交換すればOKということになります。前のオイルが残っていて他のオイルはダメ。なんて、そんなことトヨタですらできません。(工場充填オイルと販売店オイルは違うから)

(5)オイルもいろいろ楽しんでみたい
そんなあなたにオススメしたいオイルは以下のオイルになります。私が過去数々の車で楽しんできて、気持ちいいオイルだなぁ。と感じたオイルです。上から順にいい順というわけではありません。

アバルト595コンペティツィオーネ

●MOTUL 300V COMPETITION 15W50
少し前だと、全日本GTカー選手権、現在のSUPER GTなどでもサポートしているエンジンオイル。ベースオイルはエステル、グループVのものが使われている。


●モービル 1 FS X2 5W-50
オイルメジャーの一角。私はカストロールよりもモービル派です。LEXUS LFA、ポルシェ認証も取れているオイルがアバルトに悪いわけがありません。


●モービル 1 15W-50
もう一つモービルから。こちらは少し固めのオイルになります。NASCARの公式オイルにもなっているオイルです。そして、5W-50よりも少しだけお値段リーズナブルです。


●ガルフ アロー GT50 10W50
最後がガルフです。車種別(正確にはエンジン別)にオイルを発売するほど。また、企業姿勢もかなり丁寧で、説明文からどのような配合がされているかをなんとなく読み取ることができます。アバルト595コンペティツィオーネにはこの粘度になりますでしょうか。



アバルト500ですと・・・
●MOTUL 300V POWER 5W-40


●Mobil1 0W-40


●ガルフ アロー GT40 5W40



といったところでしょうか。今回ご紹介したのは、純正オイルしかまだ使ったことがありません。という方にたいして、ぜひいろいろなオイルを楽しんでいただきたいという気持ちからであります。
オイルというのは、ユーザーからすると大変閉鎖的で、しかも超高性能な化学の学問を駆使した製品です。だから、あのオイルは良かったとか、静かになった。悪かった。という抽象的な評価になってしまいます。しかし、本記事で書いた事を守りながらオイルをいろいろ変えてみることで、大切な愛車を傷つけずもっと楽しむことができる一助となれればと思っております。
オイル交換の方法も、当ブログで簡単ではありますが記載させていただきました。ブログ記事を通じてでありますので、自己責任で。ということだけは申し上げさせていただきますが、楽しいカーライフの一助となればと思います。

※参考資料
車のエンジンオイルと添加剤のページ・・・http://web.kyoto-inet.or.jp/people/macchann/
エンジンオイルの粘度や等級(グレード)の意味が知りたい(JAFホームページ)・・・http://qa.jaf.or.jp/mechanism/engine/09.htm
エンジンオイルの基礎知識(HONDA ホームページ)・・・http://www.honda.co.jp/auto-parts/oil_basic/